「……下手くそ」
「や……そ、んなこと言っ……たっ、て……」
「さっきから言ってんだろ? 向こうが怪しげな動きをしてきたら、こっちから手ぇ握っちまえって」
「あ……やっ……」
「そうしないからこうなるんだぜ」
「ん、あっ!」
「ま、積極的って喜ばれて押し付けてくるかもしんねえけどな?」
肩が全面的に露出した衣装は触って下さいと言わんばかりに白い肌を曝していた。柔らかな膨らみが、すぐ近くで息遣いの度に震える様に目を奪われる。なのにコイツにはそんな自覚の一つも無いんだ。
身を護り、伸びてくる手を去なす術も持たない。その癖、俺が客の相手をするのは気に入らないときたもんだ。まあそれはお互い様なんだけどな。
全く手のかかる任務を引き受けちまったもんだ。
ヒトに紛れて潜伏する虚がやけに増えていると報告が上って来た。派手な動きでは無くむしろひっそり忍び寄り、知らぬ間に絡め取られる、嫌なタイプと言っていいだろう。
ややこしいのは、そうした心の隙を付くようなやり方だと、ヒトがヒトを疑い、怯え、憎しみや恐怖のままに相手を襲うようになることだ。虚の仕業なのか、ヒトのやったことなのか区別が付かない。追い詰められるとヒトはとんでもない事をしでかすと震えが来るくらいだった。
コイツは実に霊圧を隠すのが上手い奴で、人混みなんかでは薄ぼんやりとしかその存在が確認出来ない。確実に見つけ出すには何らかの接触をする必要があった。
そこで歓楽街潜入がこの任務には手っ取り早いっていう話だ。まあそうだろうな。理性が薄くなったヒトには虚も付きやすいから、蠢く気配はうようよしている。酒の席でなら多少躯が触れてもおかしなことじゃない。
……だからと言ってこっちが触るだけじゃ終わらないってとこが問題なんだが。
ルキアはうさぎの格好が出来るとか言って喜んでいるけど、それだけじゃ済まないって全っ然分かっちゃいない。
眩暈がしそうだ。
俺にもこれくらいの楽しみがあってもいいだろう?
つまんねー相手と飲んでるよりよっぽど大事なことだ。
もっとも乱菊さんが一緒だからな、注目はそっちに集まるだろうけど
念には念を入れとかないと。