『事後』  ルキアの風呂は長い。  正確に言うと、躯に力が入らなくてゆっくりとしか動けないらしいのだが。  あまりそこに触れると 例の如く 「誰のせいだと思っているんだ!」と反論を喰らうのが目に見えているので、敢えて急かすようなことはしない。  一緒に入っていても、あいつはさっさと人を追い出したがる。 「何だよ!」と訴えたら、二人でいたら絶対間に合わなくなるからダメだとか抜かしやがった。  まあ、その認識は概ね正しいから、仕方なく俺は先に一人で風呂を上る。 時間で区切られるってのはなかなか切ないもんだが、現世派遣中の身では文句も言えない。 知った仲間もごく僅かだからこういうところに来る事もできるのだが。  瀞霊廷内ではこうはいかない。 監視の目が厳し過ぎて身動きが取れないこともあるくらいだ。 ルキアに最後に触れたのが何時だったか、あやふやになるってのも悲しい話だ。 だから今回は、これ幸いと二人でこの任務に取り掛かり、仕事はもちろんしっかりこなして――――  今に至る。  ルキアは足腰にきてるみたいだが、それは絶対に俺だけのせいじゃない。 あいつが嫌がるようなことはする気もないし、したくもない。  互いの望むことが同じで、したいことをしているんだから、少しくらいの下肢のだるさは幸せの証だ、 と言いたいが制裁が飛んできそうなので心の中だけで呟いておいた。  とは言え、何もせずに待つのはあまりにも暇過ぎるので、俺は先に身支度を整える。 ルキアが見立てた現世の服は、死覇装より格段に容易く身に纏う事ができる。下 帯でさえ紐を結ぶ事もなくただただ身に着ければいいものだ。  あまりにもあっさりと済んでしまうので、気持ちの切り替えにもなりやしない。 死覇装を着る時間の中で、いつもなら死神としての自分を固めていくのにこれじゃあそんな暇もない。  おかげで、消えやしない。  情欲の残り火が燻り続けて躯を焦らす。  せっかく整えようとした身支度だけど  進まねえな  止まっちまった。  言っとくけど  出てこないお前が悪いんだからな?