『鎖骨』
子犬のような小さな声がした。
「寒いのか? 薄着なんじゃねーの」
「いや、室内だし平気だ」
「普段着慣れない格好だと風邪ひくぞ? 襟開き過ぎだろ」
「……気に入らないのか? さっきから変な顔をしてるが」
「悪りぃな、元々こんな顔だ」
「……ここの皺が多いぞ」
「突っつくな!」
「そんな大声でなくても聞こえる。店内では静かにしろ」
「……やっぱ開き過ぎ。見えてるっつーの」
「な、覗くな!莫迦!!」
「はいはい、静かにしないと店に迷惑なんだろ?」
「う……」
「で? くしゃみしながらいつもと違う格好な訳は?」
「……松本殿が見立ててくれたのだ。久しぶりの現世だし、あっちはXマス前で素敵よ!と」
「あ? 確かに色々光ってるわな」
「でも嫌なら仕方無い。松本殿は褒めてくれたのだがな」
「ちょ、待て、嫌も似合わねえも思ってねえよ。ただ……」
「ただ?」
「他の奴に見られるのが我慢出来ねえだけだ」