『何が欲しい?』



「さて…」

 何が欲しい?

 大きく開かれた目を見て訊ねた。

「……何だと思う?」

 質問に質問で返してきやがった。しかもこれは、紫紺を湛えた瞳は、明らかに分かってやっている顔だ。
 いつの間にそんな(すべ)を手に入れた?

「――教えてくれよ」

 面白い。
 どこまでいけるかやってみようか。

「私の欲しいものなんて、決まっている」

 大体見当はつくけどと前置きした後で
「言ってみ」
 寝転がったまま呟いた。

「まず」
 白く細い指が宙を泳ぎ、唇に辿り着いて輪郭をなぞった。触れてきた感触はひんやりとしているのに、躯の中には焔が灯る。
「これを……貰おうか」

 口角に辿り着いた指がそのまま頬を撫でた。






 震える睫を零距離で見た。

 悪趣味だと怒られるだろうか?

 上から覆いかぶさってくるお前を見ているとぞくぞくする。

 小さな獣が俺を喰らう。

 自分から行きたいのを我慢して、お前の欲を味わおうか。

 どれだけ欲しい?

 どんな風に欲しい?



 ――――教えてくれたら 好きなだけやるよ。――――



 小さな唇が離れて、少しだけ口寂しくなる。

「もういいのか?」

「何を言っている」

 ああまた 色を湛えた瞳だ。

「まず、と言ったろう?」

 緩やかに微笑んだ後、子供のような手が俺の手に重なった。

「次は……これだ」

   導かれるまま二つの手が胸元を滑った。






 掌に熱が伝わった。

「……熱いな」
「お前もだ」


 負けず嫌いは相変わらずで、笑いがこみ上げた。


「汗ばんでる」
「……お前も」


「すっげーバクバク言ってるぞ」
「……」


 柔らかな胸の上で重ねられた右手を取り
 こっちへゆっくりと導いた。

「……俺もだよ」


互いの鼓動を聞きながら、熱を交換しあう。


次は何だ? 何が欲しい?


「もっと」
「……確かめてくれ」

「了解」


 吐息が熱いのはすぐ分かったが、確かめなきゃな。