『指』
まだ慣れないせいか、こいつは俺がその声を出すととたんに躯を強張らせる。普段の偉そうな態度は何処かへ吹っ飛んじまって、ほんとに同じ奴かよ、と呆れるほどだ。
そんなに固まるなって。膝の上で握った指は色が薄くて作り物のようだ。もっと力抜けよ、悪いことしてる気分になるじゃねえか。
……悪ぃのか? まあ、止めねえけどな。掌に収まっちまう手を取り、そっと口付けるとその目線が僅かに揺れる。構わず隙間に舌を捻じ込むとやっと指が解れてくる。そのまま一本を口に含んで舐め上げる。ほっそいよなあ、二本で俺の指と同じだ。んなことを思いながら舌を指の又に進めると、小さな声が聞こえた。
「……やぁ」
嫌な顔じゃねえだろ、と呟いたらこいつは目の前で俺の髪と同じ色に染まった。更に何か言おうとしてたけど、それは俺の指を差し入れて塞いでやった。大人しくしとけって。