『脚』
「思うんだけどよ」
片肘をつきながら、制服の似合わない大男が呟いた。
「現世の服ってのは、何でこんなに短いんだ?」
武骨な手が裾のひだを弄ぶ。素知らぬ顔で窓際に歩み寄った。
「仕方なかろう。私の選択ではないぞ」
机に腰掛けると膝上が顕わになり、紅い眼がより一層細くなった。
「……脚出すなって言ってんだけど」
「お前以外いない、構わんだろう?」
「誰か来たらどうすんだよ」
歯切れの悪い言葉と態度に笑いがこみ上げた。
「見せたくないのか。この方が便利なんじゃなかったのか?」
「……」
他人なんてどうせ眺めているだけだ。
「触れたければ触れればいい。許すのはお前だけだしな」
一瞬の空白後、ざらりとした手が脚を伝う。
「短くて良かっ……たろう?」
「ウルセーよ」
跪くような姿勢は表情が見えなかったが
「テメーだってそうだろ?」と問いかける声が掠れていて、それが酷く私を満足させた。