『月の下』
月を眺めていると凪いだ心に細波が立つ。
惹かれて止まないのは、六花と共に私の力の源を司るからなのだろうか。
満ちた月は人を狂気にいざなうと言われているが、死神にもその誘いはあるのかとふと考える。
莫迦なことを、と口元が笑みを作った。魂葬を生業として存在する者が人間と同じでは話にならない。
死神は尸魂界と現世の調整者、狂気に取り憑かれていては世界は瞬く間に崩壊への道を辿るだろう。
重責を担う者には二つの世を見る冷静な目が必要だ。
なのに
細波が荒波になり
一つの事しか考えられなくなる
それは
月の下で支配されているからか
あの色に支配されているからか