『臍』



あの時 どうして手を離したのか

あの時 どうして一言が言えなかったのか

あいつの為だと思った
引き止めるのは俺の我儘だと

私の気持ちをお前に言わせようとした
自分が決めた事にするのが怖かった

自信が無いのを
覚悟が無いのを思い知らされた

必要とされている訳ではなかった
笑って送り出されるのだから

なのに

なのに何故今
そんな表情(かお)をする
そんな目をする

幸せではないのか
満ち足りてはいないのか


臍(ほぞ)を噛む思いの日々の
何と永きことよ