『首』
「あっ……ちょっと、嫌だ 止め……」
拒絶しながらも、彼女はそこに触れられるととたんに甘い声を零し始める。瞳が幾分か潤んで見えるのは気のせいではない筈だ。
「止めると思います?」言い終わらないうちに掌で練り絹の肌を味わう。この器を創ったのは自分なのだ。どこをどう探ればどんな反応をするかなど、目を閉じていても手に取るように解る。少なくとも今まではそうだった。
違和感が紛れ込み出したのはつい最近のことだ。抵抗を無視して差し出した手に、吸い付く肌は変わらず白い。滑らかに伝う筈の指先が喉元で引っかかった。注意深く探るとうっすら赤みがかったそこには、ある思念が色濃く影を残していた。
ぽつんと落ちた染みは忌々しいほど存在を主張する。片手で覆うと、まるで彼女を縊るようだと思った。このまま力を入れたらこの細い首には自分の痕が付く。こんなものに煽られるとは案外自分も子供だな、と苦笑した。