白い花が散る。
透明な雫を零し、見開かれた瞳には何が映る。
捻じ伏せる腕か
獣の劣情か。
それでも、抵抗らしい抵抗は無い。
気力を無くしたのか、無感覚になっているのか。
聞き覚えただけの知識で割り開いた泉は、幾分か潤ってはいたけれども。
硬い中を無理矢理押し進むと、己にもひりひりと痛みが走る。
声が聞きたくて
反応が見たくて
本心を知りたくて
耳元で「嫌か」と呟いてみる。
ひくりと揺れた瞳に 色が戻る。
僅かに首を振ると ふわりと柔らかな薫りが辺りに漂った。
ああ、白く、凛と咲く花の薫りだ。
「嫌なら……こんなことは、許さない」
「俺以外には許すなよ」
「当たり……前、だ、莫迦っ!」
掠れる声が僅かに震える。
「怖いか」
「知らない、ことは……怖い。でも、お前は怖くない……から、大丈夫、だ」
許容の言葉で罪悪感と欲望が入れ替わり、猛りが急激に膨れ上がる。
存在を増した圧迫に、唇を噛む顔も
堪える為に力の籠もった指も
荒い息で上下する膨らみも
誰も知らないこいつの姿だ。
俺だけのものだ。
誰にも悟らせるな。
誰にも見せるな。
俺だけのものだ。