『吐露』



 汗ばむ背中に、労りの言葉と共に掌が添えられる。
 ようやく落ち着いてきた呼吸が、僅かに騒ぐのを悟られぬように、ゆるゆると顔を向けた。

 大丈夫かと訊かれたら、大丈夫ではない、としか答えようがない。
 快楽が嵐のように暴れまわった躯からは
 大量の気力と体力が奪われ、汗と零れ落ちた涙で首筋に幾筋かの髪が張り付いたままだ。
 同時に
 与えられたのは、狂おしいほどの悦びと、慈しみと、激しい熱。
 平気でいられる訳が無い。

 もっと加減をしろ と力なく呟けば、紅い瞳が色を湛えて揺らめいた。
 掌が背中を下りる感触は、言葉の代わりに明確な意思を伝える。
 そんなことは出来ない話だ、と。

 疼きを抑えて、聞いているのかと軽く睨んでも、指先の動きは止まらない。
 腰まで辿りついた悪戯に、背中がびくりと跳ね上がる。
 さっきまでの快楽をなぞるように、柔らかな箇所を辿られると躯は容易くその時に引き戻される。

 肌が粟立つ。
 喉が鳴る。

 やめろ

 唇が形作るまえに
 侵入する舌が熱くて、声を奪われた。

 弛緩する四肢が解かったのか、あやすような囁きが耳朶を擽る。
「嫌なら拒絶しろよ」



 嫌じゃないんだ
 むしろ望んでいるんだ

 自分が分からなくなるんだ
 怖いくらいに

 だから躊躇う

 だから抑える

 それでも 止まらない



 分かっているんだろう?