「痛ぅ……」
口に出してからしまったと思ったが遅かった。紫の瞳が訝しげにこっちを伺っていた。
「怪我か?」
「いや、何でもない。早く食おうぜ」
「昨日は何も言ってなかったな」
「や、大丈夫だからよ」
「……何を挙動不審になっているのだ。おかしな奴」
「挙動って、人を変質者みたいに言うなよ」
「どっちでも変わらないだろう? 私に言えないこともあるようだし」
……拗ねてやがる。仕方ねえな、と息を一つ付いた。
「ちょっと耳貸せ。ここじゃあな」
やっぱり言えないことなのか、とぶつぶつ呟きながら小さな頭が寄ってきた。
「大した傷じゃないけどな」
口を近付けて、囁く。
「テメーが昨日ひっかいたとこが痛てえんだよ。ちょうど腰紐が当たるからな」
やっと俺がはっきり言わなかった理由が分かったようだ。動きが止まったので覗き込むと紅潮した顔で睨まれた。
「さ、昼飯!」いつも以上に頭を撫で回してやった。
実はもう一つ 日乱で
『爪』→