『夢物語』
夢と現―ゆめとうつつ―を行き来する。
薄闇の中で白い背中がぼんやりと光っていた。
「れ、ん……じ……」
少し苦しげな声で呼ばれて雄が反応すると背中もそれに合わせて捩れた。
二種の乱れた息が辺りを埋め尽くす。顔を見ないまま腰を掴む手に力が入った。
蜜の滴る場所を何度も往復すると捩じ込んでいる筈なのに喰われてる気がして来る。持っていかれそうになるのを幾度となく堪えた。
「く……」
動きを止めて、潰さないように小さな背中に圧し掛かりうなじに舌を這わせた。間を置かず手を前に伸ばし、柔らかな膨らみを掌に納めると胸板の下で躯がびくりと震えた。
「ぁ……やあ」
艶がかってかすれた声が耳に響くのを合図に、内で互いが蠢き絡みついた。何をしても快楽が返ってくることに変わりは無い。こいつがよければ全身で俺を求めてくるし、その様子に俺も煽られる。
手の中で形を変えた膨らみは先端が硬くしこってその存在を主張した。挟み、摘んで弄ぶと、同じリズムで喉を鳴らして締めつける。
その姿はたまらなく淫らで艶めかしく、劣情を一層掻き立てた。
―もっと、もっとだ―
何度交わっても、莫迦みたいにその度に欲情した。蜜のようにとろりとした時が流れた。
「……ってのが初夢だったんだけどよ。お前はどんなんだった?」
耳まで赤くしたルキアは下を向いて震えている。
「この……エロいぬ!」
飛んできた右手を掴み顔を覗き込むが、ぷいと横を向かれた。現れた首筋からうなじにかけても染まっているのが分かると、思わず口端が上がる。
「……感度良かったぜ」
自分から近づいてきた耳朶に囁くと、あの時と同じようにびくりと震える。蕾がほころぶようにこいつの匂いが立ち上った。
「……顔は」
「ん?」
「見えなかったんだろう?」目線を合わせず言葉が続いた。「だったら私とは限らないじゃないか」
僅かに顰めた眉に陰りが見える。
「……お前だよ」
頭を撫でながら笑った。
練り絹の肌
濡烏の髪
俺を受け止めるとは思えない程小さな躯
間違える筈が無い。
「私は」
紫紺の瞳が正面を向いた。
「顔も見ないままなんて……嫌だ」
「そりゃそうだ、な」
腕を取ったまま躯ごと引き寄せ、ゆっくり口付けると紫紺が潤んで柔らかく揺れた。
角度を変えて何度も繰り返すと躯の奥の熱が燻りだす。
「ん……」
吐息混じりの声が酷く甘い。
「これならいいか?」
「うん……あ、でも」
―灯り 消してくれ―
「暗いと顔見えねえだろが」
他のとこも見るけどな。
またエロいぬ呼ばわりされるから口にはしなかったけれど
夢でも現でも、望んでいるのは同じ想い。