17


そうだ、そのままじっとしていてくれ。
「ぁふ…う」
再び体重をかけて杭を押し込んでいった。今度は一気に、圧迫感が押し寄せてくる。
「く…っ」
どちらのものともつかない吐息と僅かな声が辺りに響く。

自分のいいように動くと快楽にもどかしさがない。内襞が悦びに蠢くのがはっきり分かった。そしてそれが刺激になり、また昂りが硬く熱を増し、肉を抉る。

何度もそれを繰り返し、
溺れていく。まるで一人遊びのように。
堪らない。高みにどんどん上り詰めていった。



「あっ、はっ…やぁぁ…」勝手に跳ね上がる躯を一護が顔を歪めて見つめている。
「くっ…そ、駄目だ… 俺もうヤべぇ」
「やっ、待って、あと少し…あんっ、もっとぉ!」
「もっと、もっとだな?動くぞ?」理性の飛んだ懇願の言葉を合図に、一護は激しく腰を突き上げる。奥に当る衝撃に躯が痙攣した。
「く…あっ ああああ!」
躯中に力が入り、ふっ、と宙に投げ出され目の前が白くなる。次の瞬間、崩れていく自分を感じながら、目の前の胸に落ちていった―――


―――意識が飛んでいたらしい。頭を小突かれて我に返った。

「…取り敢えずなんか着ろよ。」
横を向き、無愛想に言う一護は既に服を着ていた。言われて自分に意識を向けると、躯の強張りに気がつく。収縮と弛緩を繰り返してくたくたになっているのだ。肘を付き上体を起こそうとするだけで、ぎしり、と音が聞こえそうだった。

「痛ぅ…」
思わず漏れた声に 眉間が反応していた。
「…悪ぃ…んなに酷くしたか?」
「いや… 大丈夫
 疲れただけだ。昨日の今日だからな」

壁に躯を預けて、私は大きく息をついた。
振り返れば、屋上で雨に濡れて。それから、一度に沢山のことが押し寄せた。―――あの虚。昔に引き戻されそうになった―――


そして大小幾つもの出来事の欠片を集め、絡め、今の模様が出来上がる。
軽い目眩が走った。
どこかで取り違えていないか?私はこれでいいのか?何でこんな格好で、こんな処で、こんなことをしている?―――

大声で叫びそうだったが、実際はそんな力は無かった。頭の中は取り留めないない想いが渦を巻きながらも、躯はぐったりとして動くことはなかった。

今更迷っても意味は無い。
内側の喧騒は私だけのものだ。一護には知り得ないことで、知られても困る。
私が黙り込んだ理由は、この少年の中で至極単純化されたようだ。

「虚…か…」
言葉はそこで途切れたが、押し止まった続きは容易に想像がついた。
浦原の行った治療と、その跡を気にしているのは明らかだった。

私は脱ぎ散らかした服を集め、のろのろと身に着けた。
そして、一言はっきりと言った。

「浦原のところへ行ってくる」

一護は目を見開いて私を見つめていた。

  
070901