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手元用の灯りは用意してあるが、戸を閉めてしまうとそこは薄暗い世界だった。私は寝転んで声が掛かるのを待った。
今日一日のことを思い返してみた。いいように行動できているだろうか?欲の解放はうまくいったのか?
一晩だけでは何とも言えんな、と笑いがこみ上げた。むしろ、これから―――だがそれも長くは続かない。私の回復と尸魂界からの接触、どちらが先か…あまり考えたくない事ではあった。

そして光りの少ない中にいた私が眠りに引き込まれそうになった時、
「――ルキア」押入れが開いた。

眩しくて、眠くて眼をしっかり開けなかった。だから、妙に長い間の後に降ってきた 温い感触に反応が遅れた。 舌が唇を割って入ってくる。力なく開いたそこは全てを受け入れた。なぞられ、絡め取られて、ため息が漏れた。

「ん…」
鼻に掛かった声が出ると、それは了承の合図になる。 腕を取られ、外に導かれて床に崩れ落ちた。触れる手が、触れられた躯が熱を持つ。一度始まってしまえば、後は何ということはない。流れに身を任せようとした時、名前を呼ばれた。
「…ルキア」 目線が合う。
「お前何も言わないな…」
「嫌ならそう言うさ」
「名前…呼んでくれ」
「――貴様は贅沢者だな」
苦笑いの後、一度だけ、と言って耳に口を寄せる。

「いち ご」その熱は一瞬のうちに沸騰して、早急な愛撫が降ってきた。



なあ、一護。欲にまみれて呼んでいいのは一人だけ。それを私に求めては駄目だ。
欲と感情を取り違えているだけだ。 だから、私は何も言わない。感じるままの嬌声なら抑えずに聞かせるけれど。

名前は呼べない。





それでもこの躯は昂ぶり、応え、感じて、白濁を受け止め達する。
その後、酷く喘いだ同じ口で
「浦原のところにいってくる。」と言うのだ。こんな女に呼ばれなくてもいいだろう?
欲で十分だ。

そうやって躯を重ねて
私の時間が無くなる時が近づいてくる。
一護は私が去れば本当に名を呼ぶ者が現れるだろう。
私が呼ぶ名は、この手から零れ落ちているが、想うくらいは許されるだろうか。







――紅が追手として来るのを 私はまだ知らない。――



end

  

後書

070916