13


骨ばった、私とは違う指がそこを弄ぶ。その度に粘着質な音が部屋に響いた。
「あっ…く…ふぅ…んっ」抜き差しに合わせて声が漏れる。
「うわ…ぐちょぐちょ」
「うるさ… 言わなくて」 いい、と最後まで言えなかった。中を擦る指が深く入り込み掻き回された。
「やっ!ああっ…ぅうん!」躯が急速に熱を帯びる。快感が溜まり、意識が白く跳びそうだった。 思わず硬く目を閉じる。
「おま、キツいよ。締め過ぎ。」一護のやけに楽しそうな声が、嗜虐心を呼び覚ます。

この躯は快楽に貪欲だ。与えられれば応え、それ以上を求める。
浅ましい、淫乱と責められたこともあった。そういう輩は堕とすのが好きな奴等だ。こちらが気丈にしていればいる程、舌なめずりをして嬲ってくる。

逃げ道が無いなら、相手を喜ばせる必要はない。屈伏がお好みなら進呈してしまおう。どうせこの身は欲のままに動くのだから。

「・・・・・・もっと・・・」一護のシャツの裾を掴んで伝えた。一瞬驚いた顔をされたが
「やらしーの」その一言の後、すぐに望みは叶えられた。

中で動く指が増え、別の指が上の突起を押し潰す。 躯が跳ね上がる強烈な刺激に声が抑えられない。
「あっ、ああああ、やあああ!」
「イヤじゃないよな?もっとだろ?」
指の抜き差しが激しくなって躯に力が入る。波が来る。持っていかれる。固く主張する胸の頂を甘噛みされた瞬間、意識が弾けた。
「あああ、あああああっ!」

世界が動きを止める。ひくつく内部と荒い息だけを感じながら脱力した。
「はは、すっげ。一人でイクなよ。」
強張って動かない脚を持ち上げ、膝を割って躯が入ってきた。 腰を掴む手にもびくりと反応してしまう。
「あ…やぁ、待っ、て」
「待てねぇ」

強すぎる刺激は痛みにすり替わり、快楽と苦痛の境目が曖昧になる。朦朧とした頭でやっと言った言葉はあっさりと無視された。
「あんなん見たら無理」
入り口に自分と違う熱を感じた。何度か往復すると、挿れるぞ、の声と共にそれは侵入してきた。
昂りが引かないうちにそこを抉られ、躯は身悶えを起こす。快楽のしるしは止めようもなく溢れ、腿を濡らした。
「…うあ…」
「…ル、キア、お前ん中絡みついてくる・・」すげぇと言われても、もう何も考えられない。喘ぎとも呻きともつかない声が途切れることなく漏れた。
抽送に揺られるうち、不意に幻影のように沸き上がる場面。そうだ、あれも似たようなことを言っていた。

―――「お前ん中、俺に纏わりついてくるな。喰われそうだ」―――

ああ、これは躯の記憶だ。だからひとりでに反応するんだ。触れれば熱を持ち、潤い、待ち望む。私は誰と交わっている?
分からない。
分からなくても構わない。この行為は記憶の反芻なのだから。


「あ…もう… やぁ…このままじゃ…おかしくなる」
自分の声が酷く甘ったるいのが分かった。
誰でもいい、何でもいいから、この苦痛と快楽の坩堝から引っ張り出して欲しかった。
早く、早く。


でないと、気が狂う。


「お前…それ、ヤバいって」
緩やかな動きが激しいものに変わった。貫くように最奥を突き、襞を抉り、じゅぷじゅぷと淫猥な音をたてながら、肉を責めたてる。
「あぁあああ!」
獣の叫びのような声が出た。全身が張り詰め、痙攣する。汗が吹き出る。
頭の奥でざわりと波立つものに、そのまま持っていかれる。
「ル…キアっ!」
中でひくつく襞は強張りをきつく締めつけた。

どくん
と大きな脈打ちを感じたが、それが自分のものか相手のものかは酷く曖昧だった。熱に浮かされた躯は、境界線が融けてしまったかのようだ。自分の中身がどろり、と流れ出るような感覚にまた頭の奥がざわついた。


  
070811