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「…平気なんだな。」

「何日か経てば消える。大したことじゃない。」

「お前にとってはどれも大したことじゃないのか?」

「…そうだな。」

「ふう…ん」
一護は眉間の皺を一層深くすると、私の手首を捉まえた。その力がやけに強くて、私は思わず顔をしかめた。
「痛っ… 痛い、離せ!」
こんな時は体格の違いを思い知る。一護の片手は容易く私の自由を奪う。剣も霊力も持たない自分の何とひ弱なことか。小さな私に戻ったようだが、あの頃のように寄り添う者はいない。

笑うしかないだろう?私は力に捩じ伏せられる訳にはいかないんだ。

辺りは夕暮れで街灯が灯り始めた。薄暗い中では、その表情から読み取れるものは僅かだった。 一護は私の手首をつかんだまま近所のスーパーに入った。力は全く弛まず、無言な態度に私は嫌なものを感じずにはいられなかった。 向かう先は建物の一番端、人影がないのを確認して、一護は私を身障者用トイレの中に押し込んだ。


「…何のつもりだ?」聞いてみたが返事は無かった。答えを期待した訳ではないので構わなかったが。

この力と熱には覚えがある。一護、お前もそちら行きなのか。仕方の無いことだ…。
手首を掴み上げられる痛みには反射的に抵抗したが、私の意識は既に別のところへ飛んでいた。









あの時も唐突だった。いや、私にとってそうなだけで あれの中では何度となく繰り返され、握り潰されていた欲情が溢れ出ただけだったのだ。

「おめぇが悪ぃんだよ、隙だらけだから」
「何のことだ!放せ!」







酷い行為だと思った。心と躯から滴るものが止まらなかった。











――――こんなことはお前だから許せるのだ。――――











「大したことじゃないんだろう?」

気がつくと一護の顔が至近距離にあった。
怒ったような、縋るような表情に
「…ああ」
とだけ答えた。



  
070708